社会福祉法人 東京緑新会
多摩療護園
障害者支援施設・多摩療護園をご紹介いたします 1 障害を抱える当事者の皆さんから学んで、多摩療護園の施設運営がスタートしました (当園と同時期の1970年代開設療護は、 北海道:くぴどハイム 奈良県:菅原園 京都:こひつじの苑 静岡県:厚生寮 愛媛県:松前清流園 熊本県:たまきな荘 などの施設があります) 2 「収容されて」生かされるのではなく、主体者として生きるために障害者が立ち上がりました。そして、生活施設ができたのです 3 38年間、利用者の抱える課題は移り変わってきました。最初は生存権の保障から始まっているのです (関連団体:青い芝の会 ) 4 利用者自らが当たり前の生活を取り戻すことを目指して、七つの取り組みをご紹介します 5 社会福祉法人『東京緑新会』は、施設開設37年目に誕生しました。そして、私たちが取り組む福祉事業の可能性が拡がりました 6 利用者が自信を持って生きていくには人的支援環境の要素が最も重要なのです ( 関連記事:エンパワメントとは ) 7 入所から退所後も、多摩療護園は利用した皆さんを応援する施設です 8 けれども、利用者の障害の状況は重くなっています。命の尊厳は守らなければなりません。 9 利用者と他の多くの重度障害者のために少しでも役に立ちたいと思っています 10 ボランティア、学生、近隣住民、他施設の皆さんと共に歩んで行きます ( 地域交流ルーム ) 11 地域の障害者の皆さんを支えることに、より一層取り組んで行きます 12 障害当事者団体や福祉NPO団体、特別支援学校等との連携を大切にして行きます 13 効率的な事業運営を目指しながらも、職員を育てる施設づくりを実現します
2010年6月1日 多摩療護園 園長 平井 寛
1 障害を抱える当事者の皆さんから学んで 開設以来38年間、当園は1972年4月の身障療護という施設種別が設けられたその当初からスタートした施設で、まさに草分けと言える施設であります。そのため、全ての事柄において自ら創造し開拓して行かざるを得ない歴史を背負ってきました。その出発の原点は、障害を抱える当事者の皆さんから学ぶということであったと言えます。 2 「収容されて」生かされるのではなく、主体者として生きるために 私たちの歴史は、1970年代の初めに、都立府中療育センターから当園(旧名称:東京都多摩更生園)への移転を迫られた重度身体障害の利用者たち(府中療育センター在所生有志)が、都庁にテントを張り「大規模・隔離、差別分類収容反対」と移転反対運動を行った、いわゆる『府中闘争』の対象となった施設開設前史をも含むものです。実に2年近くも障害者が都庁に座り込んだという、都庁が有楽町にあった時代のことです。 しかし、施設障害者が反乱を起こしたという事実は、それまでの福祉政策のあり方を根本からに問うものでした。当時の施設は医療管理が厳しく、「治療・訓練施設」として位置づけられていましたが、当園開設を期して重度身障者の「生活施設」としての歴史が始まり、以後利用者主体の施設づくりを私たちは目指したのです。 3 38年間、利用者の抱える課題は移り変わってきました @生存権(与えられた生活)からA生活権(質のある生活)、さらにはB地域自立生活移行(切り開く生活)や、Cその人なりの生活づくり(個別生活の追求)へと進展してきましたが、これら全ての課題において当園が不断に実践し、全国に発信してきた経過があります。具体的には、これまで次の4に挙げた事業等を重点的に取り組んでまいりました。 その一つは、やはり利用当事者主体の施設づくりです。そして、利用者の意向を尊重し、介助を受ける側の羞恥心を極力回避する「同性介助の原則」を打ち立てたことは、その後の都内療護施設基準となっています。自治会ができ、自治活動・当事者運動に配慮しつつ、外出や服装の自由、飲酒・喫煙の自由、医療機関選択の自由、一般投票所での選挙権の行使等が行われてきました。現在も、療護施設全国自治会ネットワークという施設自治会の全国組織の副会長を当園自治会長が担っており、園としても支援・協力しています。 二つ目は、豊かな日常生活を実現してきたことです。園内での活動のみならず、各種地域カルチャーセンターや作業所への通うこと等に目を向け、そのための時間保障を一般家庭と同様の夜間入浴実施によってなされてきました。さらに少人数での園宿泊旅行や海外を含むプライベートな旅行のコーディネート、園内外での各種レクリエーション活動等、数えると際限なくこれまでの日常支援の中身が浮かび上がってきます。多くの利用者が句集や詩集、半生記等を本にしました。生きている証を求めていく、それが人の暮らしなのです。コンサートや小中学生との交流、動物とのふれあい等、現在ボランティアや実習学生等の協力で実施している年間100件近い様々な日中活動企画メニューも、利用者の皆さんにとっての生活の潤いづくりに大いに役立っています。 三つ目は、教育を受ける権利の保障です。以前は就学猶予・免除と言われ学校に通えなかった利用者が多数存在しました。夜間中学・高校夜間部に通学するための支援や 四つ目は、就労機会の実現です。作業所等福祉的就労の場への通所支援を行い、園内の日中活動作業を「仕事」と位置づけ、わずかでも「工賃」の出る作業(陶芸・木工・紙すき等)を実施してきました。他施設との利用者交換による交流作業は長期にわたり、リサイクルショップの店番等も長年やった人がいます。 五つ目は、当事者主体が揺らいだ施設の停滞時期を乗り越えて「施設改革」を行ったことです。その過程では当事者主体の復権のみならず、全国初の施設オンブズパーソン(現「権利擁護・苦情解決運営委員会」)が当園に誕生し、その後制度普及にも取り組みました。 六つ目は、地域移行支援の取り組みです。開設以来38年間に16名、最重度の障害を抱えていても、定員の3割近い数の利用者の皆さんが、自立生活に挑戦していきました。家族の理解を得るための利用者サポートは、家族への心理的負担軽減の支援も伴います。利用者本人の支援で事足りるわけではありません。家族にとっても冒険ですし、日頃からの当園に対するよほどの信頼感がないと、とても自立生活等は認めてもらえないのです。 七つ目は、きめ細やかな利用者一人ひとりへの個別生活支援の実施です。個別要望支援要員の確保等で外出や代筆等利用者の様々なオーダーに応えながら、また個別生活支援担当チーム職員が中心となり本人が気づきにくい課題を含む様々なニーズに対応しています。介助方法・食生活・衣類・寝具・補装具・補助代替コミュニケーション方法・金銭管理・体調や健康の管理・外部の人とのコーディネート・安全管理・精神的安定等々の全面的な個別支援により、利用者本人が目指す生活づくりが支えられているのです。 5 社会福祉法人『東京緑新会』は、施設開設37年目に誕生しました 私たちは2009年2月、都立施設であった多摩療護園の民間移譲先となるために、旧所属法人の財団法人「多摩緑成会」から分離・独立し、継続的発展的に事業が展開できるよう社会福祉法人「東京緑新会」を設立しました。財団法人では事業が継続できないためです。そうして誕生した法人の設立趣意書には、「障がい者の尊厳と権利を守り、社会の一員としての生活を支援して、誰もが共に生きる社会を創る」という理念が掲げられています。私たちは、重度の障害というハンデがあっても一人ひとりの利用者が人として当り前に暮らせることへの支援を施設の枠組みにこだわらず今後も限りなく追求し続けます。 6 利用者が自信を持って生きていくには人的支援環境の要素が最も重要なのです 私たちは、これまで当園が取り組んできた個別生活支援の観点に立ち、利用者自身が力量を高め、発揮できるよう支援する中で、経済、教育、政治、就労、スポーツ、芸術、文化活動等のあらゆる分野における利用者の関心を日常的に呼び起こします。それは、重度・高齢・重症化が進む利用者への支援であり、極めて困難な道程であると言えます。 7 入所から退所後も、多摩療護園は利用した皆さんを応援する施設です どなたでも地域生活に移行したいという希望があれば支援します。私たちは、可能な限り利用者自身が様々なことに関わることを通じて、施設内外の人たちとコミュニケーションが図れる能力を高め、自らの社会生活力を養えるよう支援していきます。しかし、その支援の中身は決して本人の能力に帰するようなものではなく、基本的には最重度の人でもその人なりの自立(自律)の途があり、社会環境、制度システムをも見据えた取組みとして考えていかなければならないものととらえています。そうした視点で、地域生活移行へと結実する支援に引き続き取り組みます。 しかし、実際には、知的・精神に障害を抱える利用者が多数(約80%)となる中で、自立生活に対する選択能力の限界に近いところまで粘り強く本人の意向確認を行っております。ですから、その「意志」もゆらぎの多い実情は免れません。こうしたことから、自立生活実現後もほぼエンドレスとなる覚悟で、退園者の相談やアフターケアに応じます。 さらに、万が一途半ばにして地域でお亡くなりになった場合でも、生前に本人の希望があれば、園と自治会が管理する共同墓地の利用を認めているのです。分骨でご一緒される方もいらっしゃいます。春と秋の墓参はボランティアの皆さんと利用者の重要な園行事です。 8 けれども、利用者の障害の状況は重くなっています 当園は、先駆的な重度障害者支援の実践を展開してきました。しかし、その一方で利用者の重度・重症化は進行しています。2010年4月1日現在、入所利用者58人の平均障害程度区分は5.95、ほぼ全員が最重度認定「6」の人たちです。医療的ケアについては、主なもので呼吸器管理の気管切開4人、流動食注入の胃ろう7人、排尿のための留置カテーテルや導尿13人等、非常に重い障害を抱える人たちの施設であることもご理解ください。「主体者として生きること」を主張した利用者たちの歴史と逆行するかのように、遷延性意識障害といわれる重度のこん睡状態の方が、職員の手厚い介護、看護により10年を越えて「ひっそりと居室で生活されている」現実があります。そこには確実なご本人の存在感があるのです。命の尊厳を守ることの使命は絶対に果たさなければなりません。 9 利用者と他の多くの重度障害者のために少しでも役に立ちたいと思っています 私たちは、重い障害を抱える利用者の方々のために、近隣医療機関との連携や施設内の医療的ケア体制の充実を行い、また権利擁護への取り組みのより一層の工夫と徹底等を図るようにしていきます。 加えて、私たちが長年培ってきた重度障害者への支援内容やノウハウを様々な研修や学習会等の機会に公表し、参考としていただいていますが、これからも積極的にこれまでの経験等を伝承し、重度障害者支援に係わる福祉の向上に貢献してまいります。 10 ボランティア、学生、近隣住民、他施設の皆さんと共に歩んで行きます 当園には年間延べ3千人のボランティア・実習生・研修生の皆さんがお見えになります。また、東京都身体障害者施設協議会(全13施設参加)を代表して事務局が設置されている施設です。これからも閉鎖性のない風通しの良い施設づくりを行っていきます。 私たちは今後も様々なことを学び主張し、障害者支援の手本となるような取り組みを実施する中で、重度障害者支援の分野における『老舗』の看板を掲げながら、地道に東京都の民間施設を代表する役割を担います。多摩療護園の施設としての成熟期の力量を如何なく発揮する、そのような運営を目指します。 11 地域の障害者の皆さんを支えることに、より一層取り組んで行きます 当園は長年にわたって施設の地域支援展開を渇望してきました。 12 障害当事者団体や福祉NPO団体、特別支援学校等との連携を大切にして行きます 障害当事者団体である自立生活センターとは相互協力関係が長年にわたり定着しています。職員の各種相互研修、地域生活への移行に向けた利用者に対する相互支援と相談、自立支援推進委員会職員が学びながら支え連携してきた園内ピアカウンセリング、そしてオンブズパーソン委員の要請等です。 こうした経験から、えてして対立しがちであると言われている施設の専門性と地域障害者の当事者性が、必ずしも対立するばかりではなく、相互支援を通じて学び協力し合う関係となり、真に利用本位の内実のある生活づくりとその支援が可能となることを実証してきました。このことは、私たちが、利用者(自治会等)から謙虚に学んできた歴史が土台になっています。 そうした観点に立ち、私たちが取り組んできた多面的できめの細かな個別生活支援の蓄積を基に、障害当事者団体や福祉NPO団体、特別支援学校等との連携を推し進め、地域障害者支援ネットワークづくりの一翼を担っていきます。 13 効率的な事業運営を目指しながらも、職員を育てる施設づくりを実現します 当園の利用者支援は、個々人の障害特性への十分な理解や、長期にわたって築かれた信頼関係とそれに基づく利用者側の安心感がないと成り立ちません。新人職員が就業した場合には、一定期間研修と引継ぎに時間を掛け、先輩職員がリスク回避のために最大限の注意を払います。利用者への支援水準を意識することは、当園で育った職員の基本的資質となっています。 一方で施設を取り巻く環境は労働集約業種として絶えずコスト問題にさらされてきました。そのため、効率化と質の確保とのバランスを常に見定めていかなければなりません。私たちは、厳しい福祉切捨ての時代の中でも、利用者支援の量と質を低下させない努力をしてきました。そうした努力の結果、利用者と職員相互の信頼関係が成立しているのです。 職員の定着率を高めるためには、チームワークの良さによる一体感や職員の均質性が重要です。支援に対する質の高さが働くことのプライドや満足感を高めます。生活できる賃金の保障は当然のことですが、むしろいわれのない格差を生じさせないことの方が大切です。入所部門は、ほぼ職員全員を正規職員と致しました。限定的な数のコア職員と多数のそれ以外の非正規職員という構造でのコスト削減モデルが、当園のような最重度の障害を抱える利用者の支援にとっては、生命をも脅かしかねない高リスクととらえるからです。 業務マニュアルだけに頼って、それで事足りるとするような仕事ぶりではなく、職員の誰しもが当園で働くことに意義を感じ、自主的主体的に取り組むことが施設のサービス提供水準を引き上げます。そうした中で、現場から障害者支援のプロフェショナルな人材を育てられてこそ、真に福祉の発展に寄与できるものと考えています。 多摩療護園が取り組んできた都立民営としての37年間の努力と成果を、民間移譲後の今日において、決して「あだ花」として終わらせないためにも、私たちは今後も独自な視点や工夫による施設運営に取り組んで行きます。 私たちの施設理念、利用者支援方針、事業目標、経営目標 <施設理念> 1 私たちは、障害者の権利条約批准への取組みに呼応し、差別のない一人ひとりに優しい社会を目指します <利用者支援方針> 1 私たちは、利用者の生命・財産を守り、安心・安全・快適に利用できる環境を整えます <事業目標> 1 私たちは、一つひとつの気づきを検証し、支援ノウハウ向上等に反映させます <経営目標> 1 私たちは、しなやかで着実な、そして集中力の発揮できる経営力を生み出します |